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バッハ博物館から外に出て、改めてバッハ像を見上げた。辺りは既に暗くなっていたが、バッハ像は明るく照らされ、"音楽の父" の偉大さを改めて感じた。

その後ろのトマス教会のガラスから漏れる灯りに引き込まれるように、教会の中に入って行った。

 

ここは、J.S. バッハが 1723 年から 1750 年に世を去るまでの 27 年間、教会少年合唱団の指揮者 兼 オルガニストとして務めた教会。

在任中、バッハは合唱団員のために毎週新しいカンタータを作曲し続け、その数はなんと 1,000 作品にも及んだのだ。その厳格さと熱意から、トマス教会少年合唱団は、"バッハ教会少年合唱団" とまで呼ばれたらしい。

 
 

この教会の祭壇にはバッハの墓があることを知っていたため、ドキドキしながら ゆっくりと祭壇に近づいて行った。

 

ここに J.S. バッハが永眠している。この冷たいブロンズにしっかりと触れ、そして暫く手を合わせた。

ところで、1750 年 7月 28日に逝去したバッハの亡骸はすぐにこのトマス教会に埋葬されたわけではなく、ライプツィヒ郊外のヨハネ教会に埋葬されていたらしい。ただ当時はバッハの遺体の所在が不明で、1894年にヨハネ教会の改築をした際にバッハの遺体と思われるものが発見されることとなり、ライプツィヒ大学の解剖学博士 ヴィルヘルム・ヒスによってバッハの遺骸であると結論づけられ、1943年 12月 4日にようやく このトマス教会に移して供養されたらしい。

そして、没後200年となった 1950年 7月 28日、このブロンズのカバーがされたとのこと。

 
 

2012 年、世界で最も歴史のある少年合唱団の一つである、この教会の少年合唱団が 800 周年を迎えた。創立800年とは本当に驚くべき歴史である。
僕がここを訪れた時は 800周年の年から 7年経っていたが、祭壇近くには、800 Jahre Thomana "トマス教会少年合唱団 創立 800周年記念" と書かれたキャンドルがたくさん並んでいた。

 

僕もキャンドルを一つ手に取り 火を灯し、側の椅子にしばらく座って、想像もつかない800年前のこの教会や少年合唱団の姿を頭に描いてみた。

さて、ここ数年の間に何度かニュースメディアの記事で読んだことがあるのだが、ドイツ最古のこの少年合唱団に最近なかなか新しい団員が入団してこず、存続の危機に見舞われているというもの。デジタルストリーミング配信での動画や音楽が主流となっているこの時代、他の国同様、ドイツにおいても若い人たちの関心は専らそのようなものばかりに向けられており、バッハやバロック音楽といったものは見向きさえされないという現実があるのだ。こんな状況下、ついに、トマス教会少年合唱団の関係者の方からライプツィヒ周辺の幼稚園や小学校に出向き、ポテンシャルのある少年の獲得に躍起になっているらしい。

800年間に渡って歌い継がれてきた彼らの歴史と伝統、そして J.S. バッハの築いてきた音楽がこれからも受け継がれて行くよう 心から願っている。

 
 

バッハとトマス教会に別れを告げ、マーケットスクウェアへ戻った。

 

夜のとばりが下り、温かく優しい灯に包まれながらも、強く堂々とした威厳ある姿を醸し出していた。

 
 
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