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菩提樹通りに戻り、じき新芽の出始めるだろう菩提樹の並木道を西に向かって歩き出すと、遠くに微かながらブランデンブルク門が見え始めた。

 

近づくにつれ、その歴史的門の姿はどんどんと大きくなり、僕の歩く足も速まった。菩提樹通りもここまで。

 
 

ついにここに来た、ブランデンブルク門に!世界の色々な国からの観光客たちがおり、皆まるでゴールに辿り着いたかの如く 達成感を噛み締めているように見えた。

冷戦下、この門のすぐ側でベルリンの町は壁で東西に引き裂かれ、ブランデンブルク門は東西ドイツ分断の象徴となっていた。

 

ブランデンブルク門のすぐ真横には、the Raum der Stille "静寂の部屋" という名の小さな建物(写真では 僕の左肩近く)があり、誰でも自由に入っていいことになっていた。

その建物に入ってみると、椅子が数脚あるだけでそれ以外何も無く、外の喧騒など全く感じない無音の部屋。

都会の喧騒から逃れ、 束の間の静寂・休息を味わいたい人や、瞑想したい人にはとても意義のある場所と思った。

     
 

かなり歩いて来たため、ブランデンブルク門すぐ側のスターバックスのテラスでひと休み。ブランデンブルク門を眺めながら、大好きなキャロットケーキはまた格別に美味しかった。

 

ただ、すぐ目の前にはドイツの再統一を象徴するブランデンブルク門、右にはフランス大使館、左を見ればアメリカ大使館、こんなある種の異空間で ラテを飲み、キャロットケーキを食べていることが 何だかとてもシュールな状況のように感じてきていた。

 

ブランデンブルク門の反対側に出ると、ベルリンの壁崩壊の日に撮られた写真が設置されていた。写真の設置されていたちょうどこの位置が東ベルリンの西の境界であったことが、この写真を見てもよくわかる。

1961年から 1989年までもの長い間、 ベルリンを東西に分断した壁がここに存在し、ここから先には通り抜けできず行き止まりになっていたのだ。

そして、ドイツ統一から今年で 30年。今では門としての役割を果たしているが、30年前までここに壁が立ちはだかっていたことが信じ難かった。

 
 

ブランデンブルク門をあとにし、今夜アルゲリッチのコンサートの開かれるベルリン・フィルハーモニーの場所確認に向かう途中、the Denkmal für die ermordeten Juden Europas, "虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための追悼碑" を通った。ホロコーストで大量虐殺されたユダヤ人犠牲者たちのための追悼碑だった。

第二次世界大戦の終結から 60年の節目の年、2005年に公開が始まったらしい。

目の前に広がっている夥しい数のコンクリート平板はまるで墓地のようにも見え、言葉を失った。

2,711もの無機質なコンクリート平板が、意図的に傾斜した敷地に碁盤目状(格子状)に整然と並べられ、それら一つひとつの平板の高さは低いものから高いものまでさまざま。一見、まるで巨大な迷路のようだった。

  この巨大な追悼碑の中にゆっくりと入り、斜面した地に立つ 冷たく硬いコンクリート平板と平板の間を歩き始めた。徐々に平衡感覚を失い、ぼんやりとしてきて、孤独感のようなものも感じ始めた。
     
 

その後、辺りが暗くなってきて、世界から隔絶されたような感覚に陥った。

さらに奥に進むと、平板の高さはどんどんと高くなってきて町並みも視界から消え、やがてすっぽりと僕の背の高さを超え、圧迫感と、そしてなんとも言えない疎外感に苛まれた。

もっと突き進むと、ついには自らがとてもちっぽけな存在と感じ、どうなってしまうのだろう、早くここから抜け出したい、という焦燥感に駆られ、不安になった。

 

そして、ようやくこれらコンクリート平板で埋め尽くされた追悼碑から抜け出たときには、ホッとしたと同時に、「そういうことだったのか」と…

この追悼碑での体験は、まさに、第二次大戦中に ユダヤ人たちが味わい苦しんだであろう、恐怖感、孤独感、絶望感…。どこへ行くかも知らされず、ナチス・ドイツに強引に列車に引きずり込まれ、着いたところはアウシュヴィッツ(オシフィエンチム)等の強制収容所。抑圧され続け、その後、虐殺された 600万人ものユダヤ人たち。

ホロコーストの追悼碑は色々なところにあり、これまでにも見てきたが、このようなタイプの追悼碑は初めてで圧倒された。

 
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